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前工程2

前工程は、シリコンウェハー製造から始まります。半導体の主原料はシリコンですが、ウェハーとは円柱状のシリコンインゴットを薄く切ったもので、直径は50〜300mmほど、厚さは1mm程度です。シリコンインゴットには純度が99.999999999%のシリコンが使われ、通称「イレブンナイン(11個の9)」と呼ばれています。

前工程では、このウェハーの上に半導体チツプを数十個から数百個、格子のように整然と並べて作成します。なぜ半導体が一つひとつ個別に作られるのではなく何個もまとめて一気に作られるのかを理解するためには、シールやカードのような小さな印刷物を作るプロセスを思い浮かべてみるといいでしょう。印刷物の場合、小さな紙に一つひとつ印刷するのではとても手間がかかります。そこで、ある程度の大きさをもった紙に並べて一気に印刷し、印刷後に切り離します。半導体チップも同じように、同じパターンをもつ半導体チップを1枚のウェハー上にまとめて作っているのです。

前工程では、成膜、露光・パターン転写、エツチングという3つのプロセスを繰り返しながら半導体回路を作り込みます。成膜のプロセスでは、シリコンウェハーの上に絶縁体や金属などの薄膜を形成します。薄膜とは、厚みがnmオーダー(ナノメートル・1nm=10億分の1m)の非常に薄い膜のことです。薄膜の材料としては、絶縁体であればシリコン酸化膜やシリコン窒化物など、金属であれば多結晶シリコンやアルミニウムなどが使われます。薄膜の形成方法は複数あります。そのなかでも代表的なものがプラズマ化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Depositition)法です。この方法では、シリコンウェハー上に成膜したい材料を含むガスを送ると同時にプラズマ状態(団体、液体、気体に次ぐ第四の状態)を作り、シリコンウエハー上で化学反応を起こして成膜します。このほか、熱CVD法やスパッタ法、真空蒸着法などが使われています。

薄膜の成膜段階では、シリコンウエハー上に回路パターンはまだ作られていません。薄い膜がただ均一に敷かれているだけです。この薄膜の上にフオトレジストを一様に塗布し、フォトマスク越しに紫外線などの光を照射すると、フォトレジストに回路パターンが現像されます。このパターンを転写するプロセスをリソグラフィ、光を照射することを露光と呼びます。

その後エッチングというプロセスにより薄膜の不要な部分を除去しますが、現像されたフオトレジストはその下にある薄膜を保護する役割をもつため、薄膜がパターンの形に残るのです。エッチングにはエツチング装置が使用されます。エッチング後は再び成膜とパターン転写、エツチングを繰り返しながら、複雑で立体的な構造を形成していきます。

1 半導体ウェハー製造
1.1.シリコンインゴット切断:シリコンインコットとは、 シリコン(ケイ素:Si)の単結晶(結晶全体のあらゆる位置で結晶軸の方向がまったく同じもの)の塊のこと。これをワイヤーソーで薄くスライスし、ウェハーを作る。

1.2.ウェハーの研磨:シリコンウェハー表面の凸凹を研磨剤と研磨パッドによって鏡のように磨く。

2 半導体回路形成
2.1.ウェハー表面の酸化:ウェハーを高温の酸素に晒すことで表面を酸化させるプロセス。酸化膜は絶縁層となってトランジスタの構成要素となる。

2.2.薄膜形成:ウェハーの表面にさまざまな材料の薄膜を形成するプロセス。形成する方法には、材料ガスに晒してウェハー上に膜を形成するCVD法、放電によってイオン化した材料をウェハー表面に衝突させて成膜するスパッタ法などがある。


後工程は、組立とテストエ程とも呼ばれています。ウェハー上に作られた半導体をチップごとに切り出し、使いやすい形に加工する工程です。後工程はダイシング、フイヤボンデイング、パツケージング、最終検査という4つに分けられます。

ダイシングはウェハーを切断し、半導体チップを切り出す作業です。半導体はとても壊れやすく繊細なため、ダイシングの際には冷却や洗浄などを目的に超純水をかけながらダイヤモンドブレードで切断されます。続いて、切り出した半導体をリードフレームという金属製の枠の上に設置し、フレームと半導体を細い金の導線で接続します(フイヤボンデイング)。そして繊細な半導体を保護するために、半導体をエポキシなどの樹脂で覆います(パツケージングまたはモールデイング)。

このリードフレームの先がいわゆるムカデの足のように見える多数の金属端子になり、半導体を覆った樹脂が黒っぼく四角い箱状の物体になるのです。その後、電気的特性試験や外観構造検査などの製品検査と、環境試験や長期寿命試験などの信頼性検査を経て半導体は完成します。このように半導体は、設計工程で内部の回路を設計し、前工程で半導体の回路そのものを作り上げ、後工程で半導体として使用できる形に組み立てているのです。

また半導体は、小さな塵やホコリの侵入も許さないような、とても高い基準で管理されたクリーンな環境でなければ作れません。半導体を作るためには、設計だけでなく製造の現場においても高い技術力が求められるのです。そのため、例えば半導体工場を誘致するとしても高い技術力をもった専門の技術者を多数必要とするなど、さまざまな条件が求められます。