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包摂社会2030の実現に向けて

日本社会は人口減少のただなかにあり、その結果、日本人の中で「支え合う社会」が強く認識されるようになっているのです。従来は、教育や労働、人生等の人間の様々な局面で競争的な思想がはびこっていました。それは大きな人口を抱えた市場の中で生き抜くことが要求されていたのです。しかし、そのようなパラダイムは退潮し、すべての日本人に社会参加のチャンスが与えられることになったのです。

いや、「与えられた」というよりは「要請されている」といった方がいいかもしれません。従来、競争の中で「排除されてきた」様々な人びとが、「社会参加する中で互いに支え合う」ことが求められるようになったのです。多様な人々が社会・職場等に受け入れられる「インクルージョン(包摂)」社会が自然に出現したのです。それは日本にとって幸運であるということもできるでしょう。競争社会から包摂社会に移行する環境がマクロ的に促される状況となり、ミクロ的にもそれを担うことができる熟成が準備できているのです。そして、その社会は、江戸時代に成立していた「持続的成長」を再現することができるものになるでしょう。

多様な人々の社会や職場へ参加することになるので、そこにはそれなりの「仕掛け」や「環境整備」が必要となるでしょう。従来のように個人が単一のコミュニティや職場のみに深くつながるわけではなく、多様な背景を持つ人がモデルとなります。一人の人間が複数の組織に少しずつ所属する「複属」が普通であり、そのような背景を持つ人が参画する活動が社会を成り立たせることになるのです。

ICTは、そのような動きを促進するために使うことができる大切な要素です。インターネットの普及により、ソーシャルメディア等の各種ネットサービスを通じた個人による情報発信や他人との交流が容易になった。ソーシャルメディアを通じて出会った人々との新しいつながりを得られるようになったことは、従来型のコミュニティだけでなく、多様な人々とのつながりから生じるバーチャルなコミュニティへの参加も可能にしている。

また、家族や友人などとのソーシャルメディアの利用や、地域における共助を促進するためのICT利活用の取組も広がっている。このような社会参加を促進するICT活用については、第3節で述べる。労働人口の減少に関する対策のうち、多様な人材の労働参加については、在宅・サテライトオフィス勤務や、特定の企業に所属しない働き方などが解決策のひとつとなり得る。