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厚生労働省は2025年3月4日、「介護保険福祉用具・住宅改修評価検討会」において、介護保険の給付対象となる「通信機能のある福祉用具」の範囲を拡大する案を提示しました。これは、近年の技術革新により、通信機能を備えた福祉用具が増加し、利用者や介護者の利便性向上が期待される中での対応です。
従来、介護保険の給付対象となる福祉用具において、通信機能を持つ機器は、その通信部分が物理的に分離可能であることや、利用者の居宅から離れた場所にある端末との通信が認められないなどの制約がありました。しかし、スマートフォンの普及やIoT技術の進歩により、これらの制約を緩和し、より柔軟な対応が求められています。
この提案により、通信機能を備えた福祉用具の給付対象が拡大されることで、利用者の安全性や生活の質の向上が期待されます。以下に、通信機能のある福祉用具の概要と具体例を紹介します。
通信機能のある福祉用具の概要
通信機能のある福祉用具とは、インターネットや専用の通信回線を通じて、遠隔地の介護者や家族、医療従事者と情報を共有し、利用者の状態をリアルタイムで把握・管理できる機器を指します。これらの用具は、利用者の安全確保や介護者の負担軽減、迅速な対応を可能にするなど、多くの利点があります。
主な機能
- モニタリング機能:利用者のバイタルサイン(心拍数、血圧、体温など)や行動を監視し、異常を検知した際に通知する。
- 位置情報追跡:GPS機能を用いて、利用者の現在地を確認し、徘徊などのリスクに対応する。
- 遠隔操作・設定:介護者や医療従事者が遠隔地から機器の設定変更や操作を行う。
- データ共有:収集したデータをクラウド上に保存し、関係者間で共有することで、統合的なケアを実現する。
通信機能のある福祉用具の具体例
以下に、通信機能を備えた福祉用具の具体例を紹介します。
1. 見守りセンサー
利用者の居室やベッド周辺に設置し、動きや呼吸、心拍数などを検知します。異常が発生した場合、介護者や家族に通知が送られ、迅速な対応が可能となります。
例:
- ベッドセンサー:利用者がベッドから離れた際や、長時間同じ姿勢でいる場合に検知し、褥瘡(じょくそう)の予防や転倒防止に役立ちます。
- ドアセンサー:夜間の外出や徘徊を検知し、家族や介護者に通知します。
2. GPS機能付き徘徊感知機器
認知症の利用者が外出した際に、現在地をリアルタイムで確認できる機器です。徘徊による行方不明のリスクを軽減し、安全な生活をサポートします。
例:
- GPS内蔵の携帯端末:小型の端末を持ち歩くことで、家族や介護者が位置情報を確認できます。- GPS機能付き靴:靴にGPSを内蔵し、利用者が普段通りの生活を送りながら位置情報を取得できます。
3. 自動排泄処理装置
利用者の排泄を自動で検知し、処理する装置です。通信機能を備えることで、排泄のタイミングや回数を記録し、介護計画の立案や健康管理に役立てることができます。
例:
- 排泄予測支援機器:利用者の排泄パターンを分析し、適切なタイミングでトイレ誘導を行うことで、失禁の予防や自尊心の維持に貢献します。
4. スマート介護ベッド
ベッドの高さや角度を自動調整し、利用者の快適さや安全性を高めます。通信機能により、離床や転倒のリスクを検知し、介護者に通知することが可能です。
例:
- 離床センサー付きベッド:利用者がベッドから離れた際に検知し、転倒のリスクを低減します。
5. スマート歩行器
歩行を補助するだけでなく、利用者の歩行状態やバランスをモニタリングし、転倒のリスクを予測します。